医療はサービス業なのか
特に小さな子供を持っているとよく感じるのが、夜間や休日も診療している病院のありがたさです。子供は夜中に限って熱を出したり、日曜日や祝日に怪我をすることもよくあります。そんな時に時間外の診療を行っている病院があると大変助かります。子供だけでなく、自分が病気の時でも普段の仕事に差し支えることなく診てもらえればとても便利です。今は探せば夜間でも診てもらえる病院はすぐに分かるので困ったらちょっと行ってみようかという気になるものです。
しかし、こういった「時間外でも診てもらえる便利な病院」は医師や看護師にさらに負担をかけるものになっています。現在、いわゆる「コンビニ受診」が医師や看護師の負担を増やすものとして問題になっています。「コンビニ受診」とは症状が軽いにも関わらず時間外の救急外来へ患者がやってくることを言います。その理由は「昼間は忙しいから」「とりあえず開いていたから」といった程度です。そうしてやってくる軽症の患者への対応のために本来時間を割かなければならない重篤な患者への対応も遅れ、結果として救急患者の「たらい回し」にもつながっています。24時間営業のコンビニに立ち寄るような感覚で夜間にも患者が来ることで救急外来の医師や看護師の負担が増える結果になっているのです。
患者がこうした行動を取る背景には、人々が便利なサービスに慣れてしまっている背景があると思われます。「コンビニ受診」という名前の通り、24時間いつでも開いているコンビニはとても便利です。今では街中あるコンビニはほとんどが24時間営業で、スーパーやガソリンスタンドなどの深夜営業もよく見かけます。実際、夜中にどうしても買い物に行かなければならないという理由はそれほどないと思いますが、客としては要するに「開いているから行く」といったところでしょう。それと同じように、時間外でも診てくれる病院があれば便利だからと利用しがちです。もちろん、病気のことなのでやむを得ず来院することもありますが、中には「昼よりすいているから来た」「明日は忙しいから今診てくれ」といった自分勝手な理由で救急外来を利用する人もいます。これは患者側のモラルの問題ですが、時間外でも診療している救急外来はもはや一般に「便利なサービスを提供してくれる所」と勘違いされているのではないでしょうか。
看護や医療に関して「医療はサービス業なのか」というテーマが話題になることがあります。その点についてはいろいろな意見がありますが、コンビニ受診の例でも分かるように、現在利用者は医療や病院を一般的なサービス業と同じようにみなしています。そのため、看護師や救急隊員があきれるような理由で夜中に救急車を呼んで受診しにくるような患者も後を絶ちません。確かに、医療や看護は患者本位のものですが、病院側の負担を無視したわがままな要求は医師や看護師を疲弊させ、医療崩壊にもつながりかねないのです。